パッケージ幸福論 ~低レベル安定社会へのデザイン~  2008年 12月8日~12月21日

「低レベル安定社会」耳慣れないこの言葉は、中島氏が新しい価値観について考えていこう、という意図でなげかけた言葉です。発端は、今年の夏の異常気象。鳴り止まない雷鳴やゲリラ豪雨を体験し「自分たちの住んでいる星になにかの変化が訪れているのでは」と不安を募らせた方も多いでしょう。中島氏はこの豪雨の中「タイみたいやな」と思ったそうです。そしてアメリカの日本研究家アレックス・カー氏が2002年の著書「犬と鬼・知られざる日本の肖像」の中で経済力では比較にならないタイが日本よりも大変豊かで優れている点を指摘していた事を想起しました。どしゃぶりの雨の中「ほんとうの豊かさとは何なんだろう?」「沢山作って沢山消費することこそ幸せ、という価値観のままでいいのだろうか?」という疑問がむくむくと湧き上がってきた、と言います。「大量生産・大量消費」の急先鋒を支援しているともいえるテレビコマーシャルの仕事に携わる中島氏からこのような思いが生まれた事は驚きです。このことについては十分な議論を必要としますが、例えば少し生産性は落ちてもきちんと手をかけたものを捨てることなく消費する社会を前向きに描く事はできないのか?異常気象という警鐘を鳴らし始めたかに思えるこの地球との折り合いを今後なんらかのかたちでつけていこうとする思考が、本当に豊かで安定した社会を作っていくために求められているのではないか?こんな思いから中島氏が直感で発した「低レベル安定社会」というキーワードにわたしたちパッケージデザイナー集団は強く反応しました。昨今、環境問題が取り上げられるときにパッケージは排除すべき存在としてうかびあがるのですが、この展覧会では、そんな社会の変化を仮定したときに、パッケージをきっかけにどのような幸福論が語れるか、ということをテーマにしています。お題となるのは「中島信也が園主の中島農園の無農薬玄米」のパッケージ。もちろんフィクションですが、中島氏が「こんなお米を作ったら」と商品のコンセプトを立てています。10人のパッケージデザイナーは中島信也氏からの問いかけに挑み十人十色の回答を見せてくれるでしょう。会場では作品とともに、作者のコンセプトと中島氏のコメントをご覧いただくことで、今日デザインが果たせる役割について一緒に考えていただければ幸いです。

[ 参加デザイナー ]
 赤井 尚子(コーセー)
 石田 清志(コーセー)
 石浦 弘幸(サントリー)
 大上 一重(鹿目デザイン事務所)
 小野 太士(ポーラ)
 木村 雅彦(GKグラフィックス)
 近藤 真弓(GKグラフィックス)
 田中 健一(コーセー)
 松田 澄子(中塚広告事務所 )
 山﨑 茂(コーセー)

[ 2008年の出来事 ]
 円高 1ドル=87円
 アップル「iPhone 3G」発売
 リーマンショック