パッケージ幸福論2020「デザインは勇気の灯火」 2020年 11月15日〜11月29日
鹿目尚志先生が「君たち展覧会をやれ!」と突然叫ばれたのは2008年のことでした。僕は鹿目先生から展覧会ディレクターを任命され、以来ああでもないこうでもない、と右往左往、試行錯誤を重ね、毎年毎年みんなと展覧会を作り上げて来ました。
2020年の今年、オリンピックをも開催させない勢いの新型コロナがやって来ました。 僕たちパッケージ幸福論メンバーも「緊急事態宣言」やら「三密回避」やらでバラバラになりかけていました。そんな矢先、ここギャラリー5610で、亡くなった鹿目先生と奥様の佳代子さんの合同展覧会が開催されることになりました。僕たちパッケージ幸福論メンバーは鹿目先生にいざなわれるように会場に集まりました。
そのタイミングを見計らって故・鹿目尚志先生がまた叫ばれたのです。「何やってるんだ! こんな時こそパッケージ幸福論だろ! 」
「パッケージ幸福論」これはただの作品発表会ではありません。僕たちが、人間が、生きていく上で「デザイン」とは一体どんな意味を持っているのか?それは人類の幸せとなにか関係しているのか?そういう観点で自分たちの生業である「デザイン」をとらえてみたい。そのためには今自分たちのまわりで何が起こってるのか、社会はどうなっているのか、ということを見つめた上で展覧会を作っていこうよ、これが「パッケージ幸福論」の思いです。
今年、僕たちは物理的に分断され、集まって手を取り合うことができなくなってしまっています。じゃあ僕たちのつながりが引き裂かれたのか、 というとそんなことはない。デジタルネットワークの力によって僕たちのつながりはちゃんと保たれている。データ化されたデザインが共有されるスピードも加速し、リアルで会議室に集まっている時にはできなかった造形による喧々諤々すら可能となっていたりもする。
つまり「デザイン」にとって今は「あの頃に戻る」よりも「明日に進む」というチャンスを迎えている、と考えたほうがよいのでは?と僕は思うんです。
僕たちは「デザイン」を止めません。営業からの要請を受けたベタベタな商品デザインかもしれない。でもそこにしぶとく「少しでも良いデザイン」を体現させようとします。「アート性はいいから売れるデザインを作ってくれ」と言われても、しぶとく「少しでも良いデザイン」を体現させようとします。「今はデザインどころじゃないだろ!」と怒られても「デザイン」をやめない。このしぶとさを、コロナの今やからこそ持ち続けるべきだ、と僕は思うんです。
こんな時にしぶとく「デザイン」すること。これは「勇気」です。でも「デザイン」がきっとみんなを幸せにする、僕たちを幸せにする、ということを、頭じゃなくて、心でわかってるから僕たちはしぶとく「デザイン」を続ける。「デザイン」は未来を明るく照らすものなんだ、と心から信じてるからこそ僕たちはしぶとく生きていくんです。
つまり、「デザイン」は僕らの勇気の灯火なんです。
パッケージ幸福論2020では、今あらためて「アート」の持つ力、「デザイン」の与える勇気というものをもう一度確認できないだろうか、という思いでこれまで11年に及ぶ「パッケージ幸福論」メンバーたちの出展作品を集めてみました。この展覧会で、コロナを経た「新しいコミュニケーション・テクノロジー」の上に立つ新時代をしぶとく生き抜いて行く「デザイン」を構想するなにかのヒントを見つけられたら、と思います。
[ 参加デザイナー ]
赤井尚子
石田清志
石浦弘幸
井上大器
大上一重
小野太士
籠谷 隆
木村雅彦
近藤香織
杉山ユキ
田中健一
富田 真弓
松井 孝
松田澄子
長崎佑香
廣瀬賢一
山﨑 茂
湯本逸郎
[ 2020年の出来事 ]
新型コロナウイルスの感染拡大
東京五輪・パラ 1年延期
菅首相誕生