第11回 パッケージ幸福論 ♡愛しのパッケージ 2019年 11月17日~12月1日

経済的基盤の拡大・成長を前提に僕たちの「幸福」はかたちづくられて来ました。高齢化、少子化、気候変動などの要因からこの前提が変質し、経済の発展的拡大が望めなくなってきている社会を迎えている中で「幸福」の概念も変わってきています。10年前、僕たちの展示プロジェクトに「パッケージ幸福論」という名前をつけたのも、「これからの幸せって何?」「デザイナーがこれからの幸福社会づくりに貢献できることってあるの?」という問いかけがもとです。そして毎年、激動する社会の波に飲み込まれそうになりながら、その答えを見つけるために僕たちはもがき苦しんで来ました。「パッケージ幸福論」は単なる作品発表会ではなく、明日への答えを見つけようとするチャレンジなのです。

今年もくじけずにチャレンジします。稲盛和夫さんが著書の中で、「自分がもつ才能や能力は、自分の所有物ではない。たまたま与えられたものだ。だからこそ、自分の才能や能力は、世のため人のために使わねばならない」とおっしゃっています。僕たちクリエイターにとって「才能や能力」とは何か?それは「造形する力」です。それは元々持っている素質だけではなく、日々の仕事を通して磨き上げて来たものです。
僕たちが「世のため人のため」にできることがあるとすれば、「造形する力」を使って、人を幸福にすることなんじゃないか、と考えました。幸福にする、というのはちょっと大げさですが、僕たちが作った「造形物」によって「楽しい!」と思ってもらったり、「嬉しい!」と思ってもらったり、「欲しい!捨てたくない」とか「なるほど!」「かわいい!」と感じてもらえること、つまり「造形物」に触れた人の心をちょっとだけプラスの方向へと導くことができるんじゃないか、という思いです。

僕たち「パッケージ幸福論」の今年のチャレンジは、自分たちの専門領域である「パッケージ」という「造形」によって、みんなの心をちょっとプラスに動かすことです。個人の思いがにじみ出るような作品になるかもしれません。逆に自分から少し距離をおいて冷徹に造形を追求したプロジェクトもあるかもしれません。どんな形であれゴールは「造形の力で人の心をちょっとプラスに動かす」ということです。

「パッケージ」に心を動かされ、愛しく思うことができたなら、ゴミをほんの少しだけでも減らせるかもしれません。ここで「愛しのパッケージ」の名前に恥じないような「造形」へのこだわりを表現できれば、と思っています。

[ 参加デザイナー ] 
 赤井尚子(コーセー)
 石田清志(underline graphic) 
 石浦弘幸(サントリー)
 井上大器(ソニー) 
 大上一重(OUE DESIGN)
 籠谷 隆(大日本印刷)
 近藤香織(資生堂)
 杉山ユキ(博報堂) 
 田中健一(コトリデザインスタンダード)
 廣瀬 賢一(ソニー) 
 松田澄子(タイガー&デザイン)
 山﨑 茂 (コーセー)
 湯本 逸郎(花王 )

[ 2019年の出来事 ]
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